調査基準価格付近に集中
県村山支庁発注 花川河川改修工事
2010月6月11日掲載
山形県村山総合支庁発注の花川河川改修
工事が6月10日に開札され、その結果が公
表されたが、現在の県内建設業界の実態
と、この間の入札・契約制度の改善にも関
連することから記事として取り上げる。
工事は、「平成21年度(繰越明許)水害
対策河川整備事業(臨時河川・きめ細交付
金)花川河川改修工事」で、5月21日に簡
易U型総合評価落札方式(加算点最大10
点)で公告された。予定価格は、1,279万
6,000円で事前公表されている。
土木一式B又はC等級で、村山総合支庁
管内(山形市、上山市、天童市、山辺町、
中山町)に主たる営業所(業法7条1号)を
有することなどの参加資格で、29社がエン
トリーし、うち4社が辞退した。調査基準
価格は、1,038万3,130円で、予定価格と
の割合は、81.14%。調査基準価格より7
0円高い1,038万3,200円で応札し、加算
点も満点の10点で、評価値10.5940を
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獲得した宮部組が落札。調査基準価格の10
万円以内に11社がひしめく競争となった。
評価値で第2位だったのは、同じく加算
点で満点を獲得し、落札者より2万8,800
円高い1,041万2,000円で応札し、評価値1
0.565を獲得した上山土建工業だった。一
方、最も価格が低かったのは、唯一、調査
基準価格を下回った1,035万円のイトウ建
設で、加算点は無く、標準点のみだったた
め、評価値は9.6317と全体で17位となっ
たため、低入札調査の対象にはならなかっ
た。山形県では、21年度から、総合評価落
札方式で、調査基準価格を下回った場合に
評価値を算出する際、入札価格ではなく、
調査基準価格としていることから、イトウ
建設の場合も、実際の入札価格ではなく、
調査基準価格で算出されている。
今回の入札では、落札者が、調査基準価
格より上で応札した中で、最も価格が安
く、加算点も満点だったことから問題は
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無かったが、仮に、調査基準価格を下回っ
た業者も加算点が満点だった場合は、加算
点+標準点と調査基準価格によって割り出
される評価値は、10.5941となり、低入札
調査を行い、失格数値基準に該当しなけれ
ば、落札となった。
また、これも仮定の話だが、同じ加算点
+標準点で、調査基準価格を下回った業者
が複数存在し、そのいずれもが失格数値基
準に該当しなかった場合は、同じ評価値で
並ぶことになり、何で判定するのかが問題
となる。県建設企画課では「まだ、そうし
た事例が発生していないため、明確な規定
は無く、今後の検討課題」としているが、
現在のような過当競争の中では十分に想定
されるケースなだけに、くじ引きで決める
のか、あるいは別な評価方法で判定するの
か、早急に明確な規定を設けるべきだろ
う。
建設投資自体がピーク時に比べて大きく
落ち込み、業者数がそれほど減少していな
い中で、透明性・公平性を確保するために
条件付き一般競争入札が本格導入され、当
然のことがら、業者間の競争が激化して
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いるなか、山形県では、品質の確保ととも
に、雇用など地域経済への影響を考慮し
て、過度な低入札の抑止策として、調査基
準価格・最低制限価格の引き上げや、予定
価格の事後公表、総合評価落札方式の拡
充、「20者ルール」の取扱いに関する緩和
措置など、様々な取り組みを行っている。
しかし、仕事量が少ないなかで、業者数が
多いのだから、根本的な解決には、なかな
か結び付かないのが現実だろう。知り合い
の建設会社の社長は「一生懸命頑張って
も、最近は、受注できるかどうかは、宝く
じに当たるようなものだ」と嘆いていた。
また、別な社長は「自分の所は、すでに体
力の限界を超えている。しかし、今、仕事
を辞めれば住むところも無くなってしま
う」と話していた。過去の高度経済成長時
代のような環境にはならないのは分かって
いるが、当面の対策として、緊急的な経済
対策をした上で、スムーズな産業構造の転
換など、抜本的な対策が急務となってい
る。
