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建基法改正視野に検討会がスタート

適判見直しや期間短縮、厳罰化

2010月3月11日掲載

 国土交通省は3月8日、建築基準法の見
直しに向けた第1回検討会(座長・深尾精
一首都大学東京教授)をスタートさせた。
初会合では、工事前に義務付けられている
建築確認の審査期間短縮、申請図書の簡素
化や、法令違反した業者への罰則強化を中
心に議論することを確認した。
 改正建築基準法は、5年前の耐震偽装事
件をきっかけに確認審査を厳しくするよう
19年6月に施行されたが、審査日数の増
加や提出手続きが煩雑になるなどの弊害が
出ている。この煩雑化が「建築着工の減少
につながっている」と前原誠司国土交通大
臣は指摘する。
 8日の初会合であいさつした馬淵澄夫国
土交通副大臣は、「昨年秋に前原大臣か
ら、審査の迅速化、申請図書の簡素化、厳
罰化の見直しの指示を受け、設計、施工、
現場の方々にヒアリングを行ってきた。そ
のなかで、問題点を洗い出したうえで、

1月12日に建築確認手続き等の運用改善
の方針とりまとめ公表した。施行規則や告
示改正については、3月末を目途に公布、
6月施行の予定である」としたうえで、「
耐震偽装以来、建物に対する安心安全は、
広く国民が周知するところ。国土交通行政
として、しっかりとした法整備、制度を掲
示していかなければならないと考えている

建築基準法の改正のみならず、今後、建築
行政の全般にかかわる法制度の整備もふま
え、議論していただきたい」と期待を寄せ
る。
 検討会では今後、第2回会合で設計関
係(日本建築士会連合会、日本建築士事務
所協会連合会、日本建築家協会など7者
)、第3回で施工・生産関係・消費者・保
険関係(住宅生産団体連合会、全国建設労
働組合総連合会など7者)、第4回でユー
ザー関係、審査関係(日本ERI、パナ

ソニックなど7者)の委員による意見発表
を行う。その後、5月中旬〜6月下旬にか
けテーマ別に意見交換を行ったうえで、夏
ごろを目途に報告書を取りまとめる方針。
 09年の新設住宅着工戸数は78万84
10戸で、45年ぶりに80万戸を割っ
た。運用改善だけでは“着工数の回復は望
めない”とする声もあるが、弊害が出てい
たのは明らかだ。改善により着工戸数も改
善に向かうことを望む。
◎運用改善案の概要
<確認審査の迅速化関係>
1.確認申請図書の補正の対象の拡大等(
告示改正)
確認申請図書の補正の対象は、軽微な
不備(誤記、記載漏れ等)とされている
が、これを不備(申請者等が記載しようと
した事項が合理的に推測されるもの)とす
る。また、補正にあたっては、適合するか
どうかを決定できない旨の通知書の交付

や確認審査報告書の特定行政庁への報告を
不要とする。
2.確認審査と構造計算適合性判定審査の
並行審査を可能とする見直し(告示改正)

構造に係る確認審査後に構造計算適合
性判定を求めることとされているが、当該
確認審査を終える前においても、構造計算
適合性判定を求めることができることとす
る。
3.確認審査等の報告に係るチェックリス
ト告示の簡素化(告示改正)
指定確認検査機関が確認済証等を交付
した後に特定行政庁へ提出するチェックリ
ストを大幅に簡素化する(項目を約9割減
とする)。
4.「軽微な変更」の対象の拡大(規則改
正・技術的助言等)
計画の変更に係る確認を要しない「軽
微な変更」の対象は、安全上の危険の度

等が高くならない一定の変更とされている
が、これを建築基準関係規定に適合するこ
とが明らかな一定の変更とする。また、「
軽微な変更」の適用可能な具体事例を提示
し、運用の徹底を図る。
5.大臣認定変更手続きの迅速化
超高層建築物等の構造計算や避難安全
検証法等に係る大臣認定の変更手続きにつ
いて、迅速化を図る。
6.審査期間短縮及び審査バラツキの是
正(技術的助言等)
構造計算適合性判定の対象物件につい
ては、現在の審査期間(約70日※)の半
減を目指し、審査期間短縮に係る目標を設
定するとともに、取組方針及び公表方法
を「建築行政マネジメント計画」(仮称)
の策定指針として発出する。また、各機関
に苦情窓口の設置とそれを通じた審査のバ
ラツキ把握及び審査員への指導等の取組み
を要請する。※サンプル調査による平成

21年7月から12月までの確認済証交付
までに要した実日数の平均
<申請図書の簡素化関係>
1.構造計算概要書の廃止(規則、告示改
正)
確認申請図書のうち、構造計算概要書
を廃止する。
2.建築設備に係る確認申請図書の簡素
化(規則、告示改正等)
(1)非常用照明装置に係る技術的基
準の見直しを行うとともに、非常用照明装
置の構造詳細図を提出不要とする。
(2)水洗便所の構造詳細図を提出不
要とする。
(3)排水のための配管設備に係る技
術的基準の見直しを行うとともに、排水ト
ラップの構造に係る構造詳細図を提出不要
とするなど、配管設備に係る図書の簡素化
を行う。
(4)換気設備の構造詳細図を簡素

化する。
3.建築材料・防火設備等に係る大臣認定
書の省略(技術的助言等)
建築材料(防火材料、シックハウス建
材)、防耐火構造、防火設備、区画貫通の
管及び遮音構造について大臣認定データ
ベースの登録を義務化することにより、審
査側が大臣認定書を参照できる環境を整備
し、確認申請における大臣認定書の写しの
添付の省略を技術的助言等により徹底す
る。
<厳罰化関係>
1.違反設計等への処分の徹底
「建築行政マネジメント計画」(仮
称)の策定指針に、中間・完了検査の

徹底、違反建築物対策の推進を盛り込み、
違反設計等への処分を徹底する。
2.広範なサンプル調査を実施
違反建築物対策を推進するため、広範
なサンプル調査を実施する。
<その他関係>
1.小規模な木造戸建て住宅等(4号建築
物)に係る確認・検査の特例について、当
分の間継続する。
2.既存不適格建築物の増改築に係る特例
の見直し(平成21年国土交通省告示第891
号等)について、周知徹底を図る。
3.住宅性能評価及び長期優良住宅の認定
についても申請図書の簡素化を図る。(規
則、告示改正等)